老健施設「さんざし苑」の入所者・成田正三は、目を離すとベランダへ行こうとする。<br />介護職員の四条典座は、それが成田の妻の死と関係しているのではないか、と調べ始める。<br />妻は昨年、成田家のベランダで全身緑色の服を着て、両手の爪を剥がれ、雨のなか遺体で見つかったのだ。<br />妻の異様な最期の真相がわかれば、成田の閉ざした心も融けるのではないか――哀しみの底に隠された真実が心を震わす、感動のミステリー。<br />