家老の命(めい)で、心ならずも友を斬った鷲尾直十郎は、故郷(くに)を捨て、江戸で無為(むい)の日々を送っていた。<br />そんな折、風変わりな依頼が舞い込む。<br />深川の老舗(しにせ)菓子屋の跡取りが急死したが、直十郎はその者に生き写しだという。<br />老い先短く惚(ぼ)け始めた老父のため、替え玉を務めてほしいというのだ。<br />店に寝泊まりするようになった直十郎だったが、やがて奇妙な出来事が起こり始めた――。<br />