「千代子……」――兄が最後に残した言葉は、妻の名でもなく、たった一人の肉親である弟の宏次の名でもなかった。<br />宏次は「千代子」という名を追って雪深い新潟へ。<br />そこで知る悲劇的な一つの愛の結末……(表題作)。<br />男と女のさまざまな愛の形と、愛あるが故(ゆえ)に生まれる事件。<br />それらを描くことによって、人間心理の機微を鮮やかに浮かび上がらせた好短編11編をおさめる。<br />