亡父母の墓詣での帰り、おことは古着屋の見世先(みせさき)に、黒椿の花をあしらった母親の形見にそっくりの帯(おび)を見つけた。<br />それは去年何者かに盗まれたもの。<br />翌日、見世を訪ねるが売られた後で、思案の末、おことは訴えて出た。<br />南町奉行所同心・秋山五六郎(あきやまごろくろう)は、手下の半次(はんじ)やお富(とみ)を使い、古着屋に帯を売りに来た女を探す。<br />(表題作)江戸が情感豊かに息づく、人情味溢れる捕物帳。<br />