2年前に大学を退官した木島が美奈子に再会したのは、イタリア・ミラノ郊外の修道院でだった。<br />はじめて一夜を共にした翌朝、美奈子は風のように消えてしまった。<br />「神さまに感謝しなくっちゃ」。<br />彼女の口癖の苦い意味をのちに知った木島の胸に、愛しさがこみ上げる(「風のかたみ」)。<br />懐かしい風景、昔日の心の傷――せつない人間模様を描く8つの作品を収録。<br />