補陀落渡海(ふだらくとかい)。<br />観音浄土での往生を願い、死を覚悟で小舟に乗って熊野那智(くまのなち)から旅立つ儀式。<br />それが現代に再現されると聞いた推理作家の内田康夫は、いやがる浅見光彦を誘い取材旅行に出た。<br />熊野詣(くまのもうで)の古道をたどる2人が遭遇したのは、南紀山中での奇妙な殺人事件だった。<br />犠牲者は渡海再現で僧に扮(ふん)する男の妻だという。<br />浅見の不吉な予感をよそに、渡海は強行され……。<br />