不幸は突然、襲ってきた。<br />藩内で陽明学を講ずる門出転(かどでうたた)に幕府から苛酷な罪科が下されたのである。<br />「切腹」。<br />この学問は国禁とされていた。<br />愛弟子・和三郎の動揺は激しかった。<br />「師の大恩に報いるには自ら介錯人を努めること」と申し出た。<br />師を送る日が迫る。<br />和三郎は〃失敗〃の夢にうなされた。<br />さて当日は……? 武士道小説の名手が織りなす美しくも悲しい九編の宿命絵巻。<br />