女は小さな声で、マリモ、と言った――。<br />家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。<br />ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。<br />妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが……。<br />(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。<br />降りそそぐ雨のように心を穿つ5編の短編集。<br />