武家の庶子でありながら、家族に疎まれ寒村の寺に預けられた久斎は、兄僧たちからも辛く当たられていた。<br />そんななか、水汲みに出かける沢で出会う村の娘・しのとの時間だけが唯一の救いだったのだが……。<br />手ひどい裏切りにあい、信じるものを見失って、久斎は寺を飛び出した。<br />盗みで食い繋ぐ万吉と出会い、名を訪ねられた久斎は‘無暁’と名乗り、ともに江戸に向かう――波瀾万丈の人生の始まりだった。<br />