彼女は自分の名前も、どこにいるのかも分からなかった。<br />目の前には『博多食堂』と書かれた暖簾がかかる。<br />店にいた男性は、「迷子さんたちの案内人」で、自身も自分探しをしている最中だという。<br />分かっているのは、うつしよで生死を彷徨うなにかが起こっているということだけ――。<br />案内人・山田の料理が彼女の気持ちをほぐし、記憶が徐々に蘇ってくるが……。<br />