ミモザの父・閑に一通の封筒が届いた。<br />白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、裏には「四月二十日。<br />零時。<br />王国にて。<br />」とあった。<br />病床の父は写真に激しく動揺し、捨てろと彼に命じる。<br />その姿を見たミモザは春の夜、余命短い父のために指定された明石ビルに向かう。<br />廃墟と化したビルの最上階には三人の男たちが集まっていた。<br />男たちは過去を語りはじめる。<br />白墨の王国だったこのビルの哀しく凄まじい物語を――。<br />