「お初、さぁどこで死のう」。<br />徳兵衛に問われたお初の中で、答えはもう決まっていた。<br />「曽根崎の森」。<br />大阪の、大阪の街で死にたかった。<br />――元禄時代、難波の街。<br />物心ついたころから廓(くるわ)という特殊な世界で生きてきたお初と、醤油屋の手代・徳兵衛は、愛し合うものの、一緒になることはかなわない。<br />向かった先は、曽根崎の森だった。<br />愛と絶望の末に、語り継がれる「恋の手本」となった二人の悲恋を、やさしい小説で読む。<br />