薬やその調合技術、秘具性具に精通するよろづ光屋の情ノ字。<br />名に反して、情など一欠片もない彼は、他人を信じない。<br />唯一心を許すのは白犬の鞆絵(ともえ)だけ。<br />しかし、無垢な夜鷹・おしゅんにだけは惹かれた。<br />市井の者から大奥まで身分を問わず、萬の悩みに耳を傾ける中で見出す人間の愚かさ、美しさ。<br />五代将軍・綱吉の世を舞台に、性の深淵とまことの尊さを描いた江戸人情譚。<br />