関ヶ原前夜。<br />東西勢力の境目に位置する越前もまた、混乱のさなかにあった。<br />山深い田舎で育った十三歳の於くらは、越前府中城の炊飯場で下女働きを始める。<br />ある晩、一人夜中まで働く於くらのもとに、城仕えと思しき初老の男がつまみ食いをしにやって来る。<br />於くらの作った夜食を美味そうに頬張るその男は、なんと城主・堀尾吉晴だった。<br />吉晴に料理の才を見出された於くらは、持ち前の機転と思いやりで、人々の心を動かしていく――。<br />