七十四歳の服部勇の元に、一通の手紙が届いた。<br />「私の母のことを教えてほしい」。<br />送り主の名前に戸惑う勇の脳裏に、少年時代の風景が浮かぶ。<br />大津、米軍キャンプのそば、一家七人、小さな長屋の二階には、進駐軍相手のキャリーが住んでいた。<br />貧しさとたたかう暮らしの中に起こった、ある事件――。<br />手紙が開いた思い出の扉が、男の心にさざなみを立て、人生を変えていく。<br />(『GIプリン』改題)