私はここが嫌いだ。<br />ここには、姉がいる。<br />姉に会ったことはない。<br />あたりまえだ。<br />そもそも、私に姉はいない。<br />しかし、この家に来ると、いつも感じる。<br />姉は、私がこの家に来るのをじっと待っていたと。<br />「みなと?。<br />やっと二人で、遊べるね?」私に残された逃げ道は、ひとつしかない。<br />避けてきた廊下の奥だ。<br />姉は、すぐそこまで来ている。<br />逃げなくては。<br />──姉に捕まる前に!私は身をひるがえし、走りだす。<br />決して行きたくなかった、闇の奥へと。<br />