生来、闇の色しか知らない盲目の佳人・栞。<br />その瞳に唯一、映し出すことが出来たのは、闇から生まれたという妖人の姿だけであった。<br />初めて闇以外の色を眼にした栞は、犬の耳を生やした妖人に惹かれる。<br />名を持たなかった妖人は、栞に「空太郎」という名を付けてもらったお返しに、ひとつだけ願いを叶えてやると約束する。<br />たった数日の夜の逢瀬で、寂しさと情の境目にふたりして立つことになるのだが……。<br />