監獄の中庭に集まった見物人たちは、死刑囚が断頭台の露と消える瞬間を、いまや遅しと待っていた。<br />死刑囚ラモンは朝の冷気のなかを、二人の典獄につきそわれて断頭台への階段をのぼっていった。<br />だが彼の恋人バベットは、ラモンを助ける最後の望みを捨ててはいなかった──たとえ、はかない望みではあっても……。<br />この表題作のほか、「万年筆」「穴」など6編を収めたアイリッシュ短編集。<br />