アイリッシュの短編には「味のある作品」という言葉がぴったり当てはまる。<br />この味にはアメリカの小説とは異なるヨーロッパ的なものが多分に感取される。<br />その作品がフランスで受けている理由であろう。<br />アイリッシュの代表作といえば長編『幻の女』と『黒衣の花嫁』が念頭に浮かぶ。<br />しかしアイリッシュの本領は、長編よりもむしろ短編のほうにあるのではないかと思われる。<br />本書におさめた数編でもわかるように、その短編は粒よりの珠玉編である。<br />(訳者のことば)