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響きと怒り

フォークナーは全く予備知識を与えぬまま読者を白痴ベンジーの意識のなかに連れこむ。
そしてその錯乱の意識を通りぬけた読者は第二部で再び意識の流れの激しい屈折に戸惑う。
しかし第三部、第四部では次第にこの作品の主題と意味が明らかにされてゆく。
この作品は現在と過去との交錯がいちじるしい。
とくに一部、二部はそうであり、たとえば第一部ではベンジーの意識が現在の知覚から過去へ移るときにはたいていイタリック体で書き表わされているが〔訳文では【 】で囲った〕、同じ技法が第二部でも用いられている。
そしてこれら錯綜する時間と映像の下に、登場人物の心にとって意味の深い出来事が埋められているのである。
米国南部社会の醜悪で陰惨な人間心理を描写し、『響きと怒り』は二十世紀の傑出した小説のひとつと評価される。




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