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夏の日の声

1964年のある日の午後、第二次世界大戦退役軍人のユダヤ人フェデロフは、息子の野球試合を見ながら過去50年を回想する。
移民の息子に生まれ、よき妻に恵まれ、元気のいい二人の息子をさずかった。
いまも健康だし、ビジネスもまあまあ成功した。
……俺が死んだら、とフェデロフは思った。
火葬にしてもらおう。
お祈りなしで。
俺の灰なんかどこかに捨てればいい。
俺が幸福だったところに。
ヴァーモントの野球場の芝生に。
ニューヨークの街で童貞と処女がはじめて愛をかわしたベッドに。
戦時中の夕方、休暇中の軍曹がアメリカの赤毛の美女と並んで佇んだ、パリの家並を見おろすバルコニーに。
息子のゆりかごに。
晴れわたった夏に泳いだ大西洋の大きな波間に。
そして、愛する妻の優しい手のなかに……夏の日の声はいつの時代も同じだった。




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