読者がそれぞれの興味にまかせて、どんな読み方をしても、それなりに楽しめる小説である。<br />『ロリータ』の読者なら、ここにその原型を見出すことはまちがいあるまい。<br />あるアメリカ人はこういう名批評をしている。<br />「『ロリータ』対『マルゴ』は、いってみればトスカニーニ対クレンペラーだ」(訳者)。<br />『マルゴ』ははじめ『暗室』と題してロシア語で発表され、のち『闇のなかの笑い』と改題し、作者自身の英訳によって新しい作品として発表された。<br />