人妻ゆえに
50歳の藤堂武彦は久しぶりに故郷の京都にやってきた。
10歳年上の兄・智彦の還暦パーティーに出るためだ。
兄は父親の後を継ぎ、和装小物や手ぬぐいを手掛ける会社の社長をしている。
一方、武彦は京都を離れて北海道に居着き、フリーのカメラマンをしていた。
これまでずっと実家を避けてきたが、今回は兄が強引に話を決めてしまった。
ホテルにチェックインすると、「お久しぶりです」と声をかけられる。
現れた女は、青みがかった紫のワンピースの上に、白いカーディガンを羽織っている。
かつて長かった髪は肩のところで揃えられていて、少しふっくらしたように見えるが、切れ長だけど丸い目、コンプレックスだと言っていた薄い唇は変わらない。
別れた時は25歳だったから今は45歳のはずだが、若く見えた。
彼女……志津子は兄嫁。
かつて武彦と愛を語り合い、毎晩のように求め合った相手だった……。
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