「志乃さんは、俺にとっての天使です」 佐藤先輩は目をつむり、私の顔のすぐそばでそう言った。<br /> 家庭から、地元から、全てから逃げ出したくなった私に、佐藤先輩はそう言って一緒に東京へと逃げてくれた。<br /> 上野の駅前で、私達は途方に暮れていた。<br />地元から二人きりで逃げ出して来たが、アテなんか何もなかった。<br /> ただ、佐藤先輩と一緒にどこかへ逃げたかった――。<br />