瀬戸内海の真中に男爵島という離れ小島がある。<br />全島が赤松に覆われているが、島の中ほどに西洋の古城のような奇妙な建物があり、まわりには一種異様な妖気が漂っていた。<br />八月のある午後、一艘のヨットが男爵島の沖合いを走っていると突然、黒雲が広がり、叩きつけるような大雨と突風が襲った。<br />その時である。<br />島から望遠鏡でこの様子を窺っている人影があった。<br />狭い額、出ばった顎、落ち窪んだ眼。<br />これこそ男爵島の怪物だったのだ! サスペンス溢れる傑作長編推理。<br />