「駄目よ、駄目……」魔性の美青年・乙矢の執拗な愛撫に長い間の禁欲がようやくとけ、痺れるような甘美感が全身に湧き上がってきた香代。<br />それは諏訪湖に浮かんだボートの上で夫が十六歳年下の女と服毒心中した数日後の通夜の晩のことだった。<br />そして、乙矢は夫と心中した女の最愛の恋人なのだ……。<br />だが、何度となく、乙矢に抱かれている香代の脳裏には‘黒い疑惑’がだんだん芽生え始めていた――。<br />魔性を秘めた男女の愛憎を描いた長編官能ミステリーの傑作。<br />