憂鬱にとらえられ、傷つき、かじかんでしまった女性の心を繊細に映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説、全五篇。<br />豊平川の水面に映る真っ青な空。<br />堤防を吹き抜けるつめたい風。<br />高校三年の九月のある日、ピアスの穴を開けようとする私に向かって、かつての恋人は言ったのだ。<br />「大切なものを失くしてしまうよ」と。<br />