妻を寝取られた挙句、ボロ布のように捨てられた男の怒りが爆発した。<br />「学者の名を借りた油虫め!貴様を殺してやる!」 男が折戸めがけて短刀を振り上げた……。<br />才能を鼻にかけ、己れの出世と漁色のためには冷然と他人を犠牲にする、傲慢なR大学史学科助教授の折戸。<br />学問上の負い目から常に彼に屈服してしまう小関。<br />正反対の性格を持つ二人の心理的葛藤を、見事なコントラストで描き、背景にある大学の腐敗した派閥問題を鋭くえぐる。<br />松本清張の野心的問題作!