ひそやかなノックの音がする。<br />深夜、シーズンオフのライン川ぞいのホテルの部屋。<br />綾有里子は不安に襲われた。<br />この不安が、これから先に起きる恐ろしいでき事の予兆であるとは……。<br />麻布のレストラン『つぐみ亭』の女主人有里子は、毎年ワインロードを旅してワインを買いつける。<br />今年は弟夫婦と店の常連の早川教授がひきいるツアーといっしょであった。<br />心にそれぞれの炎を秘めて人々は葡萄街道を下る。<br />爆発のときが刻々と近づく……。<br />