上総飯野の保科家から、会津松平家に養女として入った照姫は、世子・容保との結婚は叶わず、いったん他家へ輿入れする。<br />しかし、幕末の動乱に容保の身を案じる照姫は、自ら離縁を願い出て再び松平家に戻った。<br />京都守護役として尽力したにもかかわらず、容保はやがて、賊軍として追討される身となり……。<br />恋君の悲恋を描く表題作のほか、「間諜許すまじ」「眉山は哭く」「明治四年黒谷の私闘」など、維新期の時代の波に翻弄された無名の人々を描いた四篇を収める、佳品短篇集。<br />