‘汝は、天下にきこえた大名に仕えよ’との父の遺言を胸に、渡辺勘兵衛は槍術の腕を磨いた。<br />織田信長・信忠父子の甲州攻略に、近江の小城主阿閉(あべ)淡路守家来として加わり、信忠の危機を救う武功で、一躍その名をとどろかせた。<br />だが、勘兵衛は、信忠から拝領した名刀をねだる吝くさい淡路守につくづく愛想が尽き果てる。<br />俺が心から働ける主君はいないのか。<br />戦国の世に「槍の勘兵衛」として知られ、剛胆颯爽に生き抜いてゆく男の変転の生涯を描いた長編力作。<br />