史実に残っていない小倉在住時の森鴎外の足跡を10年の歳月をかけてひたむきに調査する田上耕作とその母。<br />病、貧乏、偏見、苦悩の中で、衰弱が進んでくる(「或る『小倉日記』伝」)。<br />自らの美貌と才気をもてあまし日々エキセントリックになるぬい。<br />夫にも俳句にも見放され、「死」だけが彼女をむかえてくれた(「菊枕」)。<br />昭和28年芥川賞を受けた表題作ほか、孤独との苛酷な戦いをテーマにした、巨匠の代表作品集。<br />