父の愛人・カオルの店で過ごす時間は、19歳の万穂子にとって唯一くつろげる時であった。<br />またそれは、父と秘密を共有することも意味していた。<br />19歳、27歳、32歳――自らの愛の局面で、知らず知らずのうちに誰かの切り札(ジョーカー)を演じてしまう万穂子。<br />そのことはいつも誰かを救ったが、どこかで誰かを、時には自分をも傷つけた――祈るような人間へのいとおしみをクールにそして暖かく描く、著者初の連作長編小説。<br />