進路調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらった知世子。<br />彼女が幼稚園年長組の夏休み、家族旅行の道中で事故に遭い、母は帰らぬ人となった。<br />「死にたい」「殺されたい」。<br />からっぽの心に苛立ちだけがつのる高校2年生の夏、映画研究会OBである正岡の強引な誘いで、彼が構えるカメラの前に立つことに。<br />レンズの向こう側へあふれるモノローグが、こわばった心を解き放つ。<br />ゆるやかに快復する少女を描いた珠玉の青春小説。<br />