咆哮は消えた
逃亡中の犯罪人・徳蔵は、山中で死にかけた仔犬をひろい、ゴロと名付けた。
しかし、ゴロは骨肉しか喰わず、長ずるにつれて不敵な面持ちを備え始めた。
四肢は異様に太く、眼窩は裂け、切れ長の目には底知れぬ青い光をたたえていた……。
そして村の犬はゴロを避け、山からは鹿や猪が姿を消した。
そんなある冬の夜、徳蔵は、悲壮感のこもったすさまじい咆哮をきいた。
それ以来、徳蔵はゴロの姿を見なくなった。
――徳蔵は新聞記事で、‘猟師に追われた最後の日本狼’の話を知ったのは、それからしばらく後のことであった……。
動物と人間との葛藤と交流を描く、西村寿行の感動の動物小説! 全6篇収録。
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