不幸の中にだけ、ひりひりとする確実な存在感を見出すような人間がいるものだ――。<br />青春のすべてをヴァイオリンにかけていた主人公・澪子が恋人から負った致命的な左手の傷。<br />そんな時、恩師の訃報とともに遺贈されたイタリアの名器・グァルネリ。<br />パリに渡った澪子を待ち受けていた新たな恋の行方とは……。<br />男と女の激しい愛憎、孤独、挫折、嫉妬。<br />登場人物たちが抱えるさまざまな‘傷’のなかに、美しくも残酷な人生の光と陰を鮮烈に浮かび上がらせた森瑤子の傑作恋愛長編。<br />