キリコさんはなくし物を取り戻す名人だった。<br />息も荒らげず、恩着せがましくもなくすっと――。<br />伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。<br />前ぶれもなく理由もなくきっぱりと――。<br />リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人――失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。<br />息子と犬のアポロと暮らす私の孤独な日々に。<br />美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。<br />