中卒で家を出て以来、住み処を転々とし、日当仕事で糊口を凌いでいた17歳の北町貫多に一条の光が射した。<br />夢想の日々と決別し、正式に女性とつきあうことになったのだ。<br />人並みの男女交際をなし得るため、労働意欲に火のついた貫多は、月払いの酒屋の仕事に就く。<br />だが、やがて貫多は店主の好意に反し前借り、遅刻、無断欠勤におよび……。<br />(「貧窶の沼」より)夢想と買淫、逆恨みと後悔の青春の日々を描く私小説集。<br />カバーイラスト/杉本一文