波郷俳句が万人から愛されるのはその詩精神の高さに基く。<br />リリシズムと浪漫主義が美しい階調を奏でる「鶴の眼」の青春性。<br />格調高き「風切」の古典性、大陸の戦野に一兵卒の哀歓を描く「病雁」、焦土諷詠に徹した「雨覆」、死を超克した「惜命」と高邁な詩人が、一切を放下して俳句に生涯を託した姿が見られる。<br />