親から継いだ牧場で黙々と牛の世話をする秀一は、三十歳になるまで女を抱いたことがない。<br />そんな彼が、嫁来い運動で中国から迎え入れた花海とかよわす、言葉にならない想いとは――。<br />(「波に咲く」)寄せては返す波のような欲望にいっとき身を任せ、どうしようもない淋しさを封じ込めようとする男と女。<br />安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。<br />