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誘蛾燈

「蛾が舞いこんできやがったぞ。
誘蛾燈に誘われて」咽喉を鳴らすような声で男が呟いた。
だが、男の見つめる先には誘蛾燈などない。
青年は不思議に思って男に訊ねた。
「向こうに見えるあの灯がそうだよ」男が顎をしゃくって見せた先の、道一つ隔てた坂上に、薔薇色の灯をともした瀟洒な建物が見える。
「あの灯が薔薇色に輝く晩は気をつけなきゃいけねえ」それから男が青年に聞かせた話は、屋敷に住む美しい女主人の、世にも恐ろしい物語だった……。
表題作ほか9篇を収めた傑作短編集!カバーイラスト/杉本一文




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