「おまえは走っている汽車のなかで生まれたから、出生地があいまいなのだ」。<br />一所不在の思想に取り憑かれた著者は、やがて母のこの冗談めいた一言に執着するようになる。<br />酒飲みの警察官の父と非嫡出子の母との間に生まれて以来、家を出、新宿の酒場を学校として過ごした青春時代を表現力豊かに描く。<br />虚実ないまぜのユニークな自叙伝。<br />