ラブレターにはろくな文例がない、と悦子は発見した。<br />相思相愛の文例はあっても、片恋の苦しさをしみじみ訴えるというのは、ない。<br />――スキデス。<br />いろんなことがありました――これ以上、何も浮かんでこない。<br />親友の信子とすごした、田舎での夏休みは、高校生になったばかりの二人にとって忘れられないものとなった。<br />16歳のひと夏の思い出を、爽やかに描く表題作、他3篇を収録。<br />