――わしは恐ろしい肉食獣になりはてていた。<br />墓穴の底で、棺のふたをこじ開け、まず指先にふれたものは、肉が腐って抜け落ちた髪の毛、ゴツゴツした頭蓋骨だった。<br />死体に寄生した蛆虫さえも死に絶えてしまっていた。<br />信じ切っていた友の奸計にはまり、愛する妻にも裏切られた一匹の白髪の鬼。<br />地獄の底からよみがえった復讐鬼。<br />乱歩の伝奇小説の最高傑作! 白髪鬼/盗難/一枚の切符/人でなしの恋/恐怖王/を収録。<br />