時は、第二次世界大戦直前、僕の尊敬する博士が、南洋探険からみやげに持ち帰ったのは奇怪な火だった。<br />火はそれ自身生きており、いけにえさえ要求する恐るべき火だという。<br />実際、博士は探険途中で、火がひとりの水兵と、原地の娘ふたりを呑み込んだのを目撃していた。<br />はたしてその火の正体は…?が、この未知の生命体が博士の家族や、いずれ戦争に突入した日本に、恐るべき災いをもたらすことになるのだった。<br />――川又千秋の、冒険とメルヘンの秀作集。<br />