俺はもうまもなく死ぬだろう…ガン宣告を受けてから覚悟の10年、残された日時に刻みつけるように小説を書いた作家・稲見一良。<br />男らしいやさしさを追い求め、花見川の自然を呼吸し、ときに少年の憧憬さえ甦る。<br />本作品集は、腹水がたまり、半身になりながら、虫の息で、原稿用紙に鉛筆をなでるように書いた遺作の数々である。<br />死を目前にして、透徹したまなざしで、人生を見つめた珠玉の物語。<br />人は、こうやって生き、こうやって死ぬ……。<br />