漱石文学には珍しい自伝的色彩の濃い作品。<br />健三、お住夫婦の生活を中心に展開されるエゴイズムの矛盾、そして因習的な「家」の秩序の圧迫のなかで、自我にめざめなければならなかった近代日本の知識人の課題。<br />それらに、みずからの問題として対決した漱石の人間的苦悩は、今日なお新しい課題を提起する。<br />大正4年作。<br />