「彫像」という名を刻まれた男・新坂五郎。<br />渡仏して15年。<br />かつてフルート奏者を目指し留学した彼の人生を狂わせたのはたった53枚の賭け札。<br />あの夜以来、「沈黙」との勝負に負けて以来、賭事とは縁を切った。<br />パリの裏町で未来を喪くし、盗品を売り捌く故買屋の身となった。<br />ただ、絶望と孤独とを友に生きた。<br />まるで、ひっそりと佇む彫像のように。<br />ある日、大きな仕事が舞いこんだ。<br />そして、「彫像」は偶然、「沈黙」に再会する……。<br />