秋原健一、四十三歳、ふつうの会社員。<br />波多野妙子、OLを辞めた三十歳。<br />それぞれに過去の小さくも苦い思いを抱えた男と女は、通勤の京浜急行で出会い、途中下車した駅の蕎麦屋でせいろをすすり、ただテレビを観る。<br />淡く、不思議な甘さに包まれながら――。<br />爽やかな感性の触れあいを描いた表題作他二編収録。<br />日常に潜むふとした喜びやせつなさを掬い取った可憐な短編集。<br />