夏が、終ろうとしていた。<br />――デビュー作『情事』を、この書き出しではじめた著者は、様々な‘終り’のなかに、男と女、人間のドラマを見いだし、創作へと駆り立てられつづけた作家でもあった。<br />愛する家族のこと、気のおけない友と過ごした時間、創作への情熱、新鮮な驚きと刺激を与えてくれた旅の話…。<br />人生の様々な‘終り’のなかで、寂寥感とともに、作家の胸に去来する人、言葉、風景――。<br />惜しまれつつ急逝した著者の、エピローグを飾る名エッセー集。<br />